火打袋が欲しい。
火打石による着火を、ブッシュクラフターのスズキサトル師匠から教わって以来、火打金や火口を仕舞っておく袋を欲していました。便利に使えるだけではなく、愛着が湧く、森や野に過ごす時間の相棒です。
これらは過去に作ったものですが、間に合わせの端切れを縫い付けただけで、収納力、サイズ感なども考えられていません。
それでも自分が使うためには、何を収納できて如何に腰に装着されるか、ということを考えさせてくれました。
ヌメ革にしよう。染めず、オイル仕上げでエイジングを愉しめるように。
構想に浮かんでいたのは、例えばイソップ物語か何かに出てくる悪徳商人の腰にぶら下がっている邪悪なコイン入れです。レザークラフトされたものではなく、もっと古い時代に使われていたような姿です。もしかしたらアルプス山中で発見されたアイスマン氏の腰にもあったかもしれないようなやつです。私はpinterestはじめ、世界中のサイトやショップ、動画を探してみました。キーワードは "tinder pouch" "bushcraft pouch" "edc bag" などです。じつは半年ぐらいは探しておりました。ありません。美しすぎたり、高機能だったり、格好良すぎるのです。私が探し求めている、素朴で醜くて邪悪な姿をしたポーチはどこにもありません。それでも徐々にデザインや構造が脳裏で固まり始めました。
正月。丘の上の観音堂で、田園越しに私たちの住むまちを眺めて過ごした日、帰宅すると革を切り穴をあけ、縫い付けました。裏返して水に濡らし、ナルゲンのボトルかぶせて成形します。ウエットフォーミングです。
私の革の火打袋が、ゆっくりと邪悪な姿で立ち上がり始めます(写真では寝てます)。
反対側。醜悪極まりない姿です。これを一晩乾かし、脂をたっぷり塗り込んで翌朝、完成させました。冒頭に掲げた一枚です。
ひもは、気に入ったものがなかったので木綿金剛打の細いロープを自分で染めたものです。留め具はヌメ革を三枚張り合わせコバを軽く磨いたもの。中には、チャークロスと火打金が入った缶。ほぐした麻ひもは善光寺さんご門前の八幡屋磯五郎缶です(ここは信州です)。さらに小さな缶にファットウッドを少し。あまけにフェロセリウムロッドが入ってちょうど収まるサイズに仕上がりました。
これです。この後ろ姿。イケメン要素ゼロで、私の腰にぶら下がっている姿がありありと浮かびます。ナイフは素敵なものが写っていますね。フィンランド、Puronvarsiの手で鍛えられた鍛造ブレードをローズウッドのハンドル、シースで仕立てたPuukkoです。このふたつが、森にいる私の腰にあります。
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