とある森ガールさんのための、こぶりで可愛らしいプーッコをご紹介しましょう。
この森ガールさん、北アルプスの稜線にもお出かけになるようなお方なのですが、ふだんからも里山やフィールドで多くの時間をお過ごしのようで、その際にブルーまたはパープル系のアイテムをご愛用と拝察いたしました。そこで、深めのブルーのカラースペーサを挟みまして、ローズウッドと白樫のコントラストを軸に、アクセントにレザーワッシャーを取り入れた作品に仕上げてみました。
製作に先立ちましてはこのように考えました。まず、美しくなければいけないということ。道具は、持ち主に似てなくてはならないのです。つぎに、愛着を持ってお使いいただきたかったので、オーナー様の掌にしっくりなじむ小振りなハンドル、ブレードといたしました。荒っぽいバトニングをなさるようなことは想定せず、ひだまりで林檎を剥いたり、ちょっとした細工にお使いいただけるようなイメージです。やや脱線しますが、細かい作業で自由自在に使いこなせるブレードの長さは、人差し指の長さまでなのです。じゃが芋の芽をくり抜く、リンゴの芯をえぐる、これを安全に自由自在に行うには、人差し指より長い刃物は不向きなのです。板前さんも、普通出刃包丁を使いますが、場合によっては「鯵切」という短いものに持ち替えます。ポイント付近のスパインに人差し指の先端を添えて使うような繊細な仕事ということですね。私自身が使いこなせているナイフのブレード長を計ってみました。Lauri社のプーッコで95ミリでした。そして人差し指は、100ミリでした。こんな理由もありまして、私には100ミリを超えるプーッコは作れません。鉈のように使うレウクであれば、240ぐらいまで手掛けられそうなのですが。
さて、ハンドルを組み立てていきます。そして接着後、タングの末端を叩きます。ひたすら叩きます。ブレードからつながるこの尻尾が、ハンドル部材をがっちり固定してくれます。本場の北欧では、最後はつるつるに磨き上げて鉄と真鍮をぷるん、とまとめてしまうのですが、私はカシメた末端のこの様子を残しておくことがあります。
ハンドルの研磨中です。白樫の木目、鹿角の表情、作っていて飽きることがありません。天然素材の美しさ、これに尽きます。
400番ぐらいでハンド研磨の最中です。ここでほぼ形状が決まり、この後はリューターなどで番手を上げて滑らかな質感を探っていきます。
さて、シースを作って完成です。
小振りなブレードとハンドル、おわかりいただけますか?
先に書きましたタング末端の処理です。北欧的には「これは未完成!」とお𠮟りを受けるかもしれません。
ブレードは、グラインダー痕もそのまま、実はファクトリーメイドのままなんです。軽く革砥を当てただけですが、それでもLauri社のブレードは素晴らしい切れ味です。
オーナー様がこの作品に「銘」を授けてくださいました。銘、小紫。
たましいより、ありがとうございます。刃こぼれして、まくれて、折れるまでお使いください。どうぞよろしく、お願い申し上げます。